Ecology of Urban Green

(都市緑地の生態学)

世界人口の6割が都市に住む。そんな,人類にとって未知の時代が到来しようとしています。

都市への人口流入に伴い,都市内外の土地利用は変貌していきます。都市の拡大が近郊の山野を改変するとともに,都市の内部には「島」のような未開発地区が取り残されていきます。最近,私たちの研究室ではこの「島」状の都市緑地・都市林の生態系にも着目しています。そこは天然と人為の混ざり合う特殊な生態系で,取り残された在来種と,侵入してくる外来種が干渉する場でもあります。

都市生活を営む人にとって,都市緑地は最も近い「自然(?)」であり,人は都市緑地の生態系からさまざまなサービス(福利)を得ることを期待します。しかし生態系の作用は常に人にとって快いものとは限らず,多少の害もつきものです。この福利や害の受け取り方は人によって異なるので,都市緑地をめぐる多様な主体(人)の間で意見の食い違いが起こったりします。こうした問題の一部は,情報共有によってある程度解消できる…多分…かもしれません。

院生の小南君は,柏市内の都市緑地に生息するハクビシンとタヌキの問題について取り組みました(IWMC発表の要旨)。似た体サイズの食肉目で,似たようなものを食べており,どちらも都市の中(緑地)で繁殖していました。ただ,「ハクビシンは登るけどタヌキは(基本)登らない」という基本的な生態の違いにより,都市空間の利用の仕方が異なり,人間生活への影響も全く違っていました。

今までタヌキやハクビシンについては農村地帯などでの研究が多く,小面積の孤立した緑地での生態を真面目に定量的に研究した例は限られるので,なかなか貴重です。このような地道な調査で得られた知見を生かして,都市緑地をめぐる軋轢を軽減していくことも,今後の重要な課題です。

なお,生態系の視点からみた食肉目は,重要な種子散布者でもあり,脊椎動物も食うトッププレデターであり,環境と季節に合わせて餌を自在に変化させる雑食者でもあります。食肉目の在不在によって,都市生態系の群集構造や生態系機能はどのように変化するのでしょう?・・・このような研究にも,そのうち取り組んでみたいものです。

ただ,食肉目の研究はお金がかかって大変なので,現在本研究室では食肉目を研究する院生は募集していません。現在は植物や,送粉者やマダニなど小さい生物などを対象に都市林の研究を行なっています。