ESJ67中止

明日から名古屋で開催予定でした日本生態学会第67回大会はCOVID-19拡大予防のため中止となってしまいました。

本研究室で予定していた口頭発表2件(L01-01, E01-09)は,要旨のみwebからお読みいただけます(要旨登録・参加費払い込みが完了していたため,大会キャンセルポリシーにより,発表したことになるそうです)。

「残念」では言い表せないほど残念ですが,大会の準備・運営に当たられた方々の無念を思うと言葉もありません。

なお今回の問題を受けて,PNAS にこんな opinion が出ています。人獣共通感染症の流行には野生動物の生息地破壊が関与しているとされます。SDGs では食料生産など他の目標が重視されがちで,生態系保全ははっきり言って後回しですが,それでは「大変なことになりますよ!(はに丸ジャーナル)」という話。。

昨年の台風に引き続き,だいぶ踏んだり蹴ったり感ですが,森林生態系の保全に少しでも役立つよう引き続きがんばります。

本のおわび

「人と生態系のダイナミクス 2 森林の歴史と未来」の3章 p.102 で,なんとササが低木だと書いてあります。もちろんササは木ではありません。推敲過程で事故が起こった模様です。

また p.151 の保安林の面積率も一桁間違っています。4.8%→48%です(←読めば分かりますが)

お買い上げ下さった方申し訳ありません。。ご容赦ください。

「がちょーん」は死語ですが他に表現しようのない感情です。がちょーん。

オープンラボ(2/13)

2/13 に専攻のオープンラボ(研究室見学会)が実施されますが,就活のインターン等と違い,単なる見学会です。参加してもしなくても入試の合否には一切関係ありません。特に,既に見学に来られた方はもう来なくて結構です。

来年の入試説明会は5月です。オープンラボでなくても,見学は随時受け付けています。

近刊案内(森林の歴史と未来)

教員の書籍が近々出版されます。初学者・実務家向けの入門書,税込み3300円です。

詳細はこちら(出版社のサイト

書店さんでお見かけの際はお手に取ってご覧いただければ幸いです。

追記)印刷の不具合があったそうで配本が遅れております。12/7頃には本屋に並ぶそうです。

シカが減ればマダニはすぐ減るのか?

一般公開中の10/25に,D1松山君の原著論文が公開になりました。

松山・揚妻・岡田・鈴木 (2019) シカの排除がマダニ類へ及ぼす影響 ̶シカ密度を操作した野外実験による検証̶.衛生動物 70:153-158.

※「衛生動物」は日本衛生動物学会の学会誌です。

ニホンジカやイノシシなどの動物が増えるとマダニが増える,と一般には考えられています。それでは,これらの動物が減れば,マダニはすぐに減るのでしょうか?

マダニは様々な野生動物から吸血することが可能です。たった1種類の動物が減っただけで,本当にマダニは減るのでしょうか。それとも,すべての野生動物を絶滅させでもしなければ,マダニは減らないのでしょうか。

この問いに答えるため,松山君は,北大・苫小牧研究林のニホンジカ密度管理実験区でマダニの密度変化を経年追跡しました。

確かに,長年シカが高密度で生息していた実験区では,マダニの密度も高く,10年以上シカがいなかった実験区では,マダニの密度も低く抑えられていました。ただし,シカを何年も高密度で飼った後で追い出した実験区では,シカがいなくなって3年後にようやくマダニの密度が減ってきました。

こんな複雑な結果をもたらした原因は,マダニの変わった生活環にあるようです。マダニはゲームのキャラクターみたいな生き物でして,吸血に成功する度に次のレベルへ移行し,利用できる宿主が変わる…と,詳しくは原著論文をご覧ください。

個体群生態学的にネタ満載の生物であるのにも関わらず,日本では,野外での生活史や個体群動態に関する先行研究が乏しいようです。松山君の今後の研究が期待されます。

あ,ちなみにこの記事では簡単のため「マダニ」とか言ってますが,マダニ属とチマダニ属の多数の種の総称(俗称)です。それぞれの種類が異なる宿主を好み, 別の病原体を運ぶとも言われます。病気の予防に役立てるには,それぞれの生物の動態について,さらに詳しい研究が必要です。